ご存知のように、初日の8月26日はゲリラ豪雨のため、残念ながら中止となってしまった。大貫妙子、ハンバートハンバート、コトリンゴという組み合わせに期待が集まっていただけに、スタッフは苦渋の決断。一方で、この素敵なキャスティングでのリベンジを誓ったのだった。
さて、明けて27日は曇り空。夏の終わりらしい気温で、絶好のイベント日和になった。
Opening Actとして最初に登場したのはPredawn。注目の新進女性シンガーソングライターで、非常にセンスのよいアコースティック・ギターの弾き語りが魅力だ。去年のルルティモ・バーチョに出演して、演奏後、会場に持ち込んだCDがすぐに売り切れたというエピソードの持ち主でもある。
今回はサポートにドラムとウッドベースが加わってのステージ。相変わらず美しいアルペジオで「Keep Silence」からスタートし、歌い始めた瞬間、ニュアンスに富んだ柔らかい声に会場が釘付けになる。キラーチューン「Suddenly」まで、アッという間のライブで、この日も彼女のCDは売り切れたのだった。
Sotte Bosseは、ボーカルのCanaが出産したため久々のライブ。コンビを組むプロデューサー&キーボードのナカムラヒロシが、Canaが双子を出産したことを告げると会場から温かい拍手が起こる。ゆったりしたバース(前歌)から始まったのは、代表曲「太陽のキス」だった。
途中、カバーを3曲歌った中で、レゲエにアレンジされた「ガラス越しに消えた夏」が、涼しい風が吹く会場の雰囲気にぴったり合って気持ちがいい。久しぶりのせいか、後半に行くほど調子が上がってきて、ラストのストレートな愛のバラード「hello」がよかった。完全復帰のSotte Bosseだった。
スウェーデンから参加してくれたのは、Maia Hirasawa。本格派のシンガーソングライターだ。セミアコのエレキギターをざっくり掻き鳴らして歌う姿に、スケールの大きな才能が見える。
「ちょっとブルースカイが見えて嬉しい」と空を見上げてニッコリ。「私の日本語はまだまだですけど、日本人とのハーフなので、日本語でも歌いたくて」と言って「太陽」を歌う。雲が切れて、どんどん青空が広がっていく。ギターばかりでなく、ピアノの弾き語りもいい。光ったのはラストの「Boom!」だった。サポート・メンバーが打ち鳴らすタムタムをバックに高らかに歌う声に、力強さがみなぎる。北欧の“バイキング。ミュージック”を彷彿とさせるあたり、今後がさらに楽しみなニューカマーだ。
夏川りみは、鮮やかな島衣装で登場。イベントの流れに華麗な変化を与える。横笛、アコギをバックに、夏川は三線を弾きながら「あがろーざ節」を歌う。石垣島民謡のゆったりしたリズムが、オーディエンスの心と体を心地よく揺らす。
「今日、着ているのは、沖縄の紅型(びんがた)って言うんですよ。本物はすごく高いです。これは本物じゃないですよ」と笑わせる。続く「童神」は子守唄。会場でお母さんに抱かれていた子供が、本当に寝てしまったのには、思わず微笑んでしまった。最後の「花」は、アカペラで。夏川の美声を堪能したライブだった。
初のアコースティック・セットを披露してくれたのは、BONNIE PINKだった。いきなりデビュー曲「Heaven's Kitchen」で、卓越したボーカリゼーションを聴かせる。芯の太い声と豊かなグルーヴが、オーディエンスを魅了する。
「降らなくて、よかったですね。今、五重塔がライトアップされて、おいしい時間帯です」と、次はヒットチューン「A Perfect Sky」。豪華なセットリストだ。
「デビュー16年目に入って、以前の曲を新曲のように歌ってみたいと思ってセルフカバー・アルバムを作ってました」。このライブは、そんな彼女のニューアルバムを、一足先に聴かせてくれるという内容。フォーキーな「Tonight, the Night」まで、充実した音楽を体現してくれた。
いよいよ会場が音楽に集中してきたところで、持田香織が痛快な演出でオーディエンスの興味をさらった。ピアノ、ギター、ベース、ドラムをバックに、シックな黒のコスチュームで現われた持田が、いきなりジャジーな「Night Cats」を歌い出した。さらにしっとりした「静かな夜」で、会場は魔法にかけられたように持田のサウンドワールドに没入していく。
トッド・ラングレンのカバー「A Dream Goes On Forever」など、チャーミングな声とセットリストで会場を持田ワールドの染め上げた。
「このイベントに出させていただくのは、3回目。これからも等身大で、いろんな人の力を借りながらやっていきますので、よろしく」というコメントが心に残った。
この日のトリは、ORIGINAL LOVE。彼らも初のアコースティック・セットだ。が、1曲目の「サンシャインロマンス」から、さすがと思わせるパファーマンス。ギター2本とウッドベースという穏やかな編成なのに、3人は“キンキー”という言葉がぴったりの刺激的なサウンドを繰り出す。
続く「恋の片道切符」はニール・セダカで60年代にヒットしたオールドポップスのカバーなのだが、“オートハープ”というこれまたレアなオールド楽器を使うあたりがタダモノではない。
たっぷり声を響かせて田島貴男が♪あ〜ま〜く〜♪と「接吻」を歌い出すと、オーディエンスから「ウォー!」という歓声が上がる。初期のヒット作「ジャンピン・ジャック・ジャイブ」では観客とのコール&レスポンスをダイナミックに決め、ラストの「ボラーレ!」では完全に会場を圧倒。「イェー、いけがみ!」と叫んでトリにふさわしい盛り上がりでこの日を締めてくれたのだった。
8月28日は快晴。戻ってきた夏の強い日差しの中、Opening Act の森恵がSlow Music Slow LIVEオリジナルの団扇を片手に現われた。
森は1曲目のゆったりしたワルツ「時を越えて」から、心の内を正確に捉えながら感情を込めて歌うという彼女の持ち味を発揮する。アコギ弾き語りの力強さを存分に活かして、歌詞を大切にしたバラード「笑顔でいられるように」まで一気に歌い、潔いアーティスト・キャラクターをしっかり印象付けた。
普段はsleepy.abという名前でエレクトリックなサウンドを展開している4人が、今日はアコースティック・セットsleepy.acとして本門寺に初登場。実はsleepy.acも人気が高く、地元・札幌の芸術の森劇場では伝説のライブを行なっている。そしてSlow Music Slow LIVEに、sleepy.acは新鮮な衝撃を与えてくれたのだった。
フレットレスベースとカホーンの織り成すリズムに乗って、成山剛の透明感あふれるボーカルが流れ出した途端、気温が1℃下がった。そこに山内憲介のスペイシーなギターが加わると、さらに2℃下がった気分。その後も山内は、ギター以外にもグロッケン(鉄琴)など楽器をいくつも持ち替える。中でも彼がマトリョーシカの形をした電子楽器を弾いた「palette」でsleepy.acの魅力が爆発。インスピレーションに富んだポップを、会場は驚きとともに味わった。
続いてもユニークなバンドが登場。OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDはドラム、パーカッション、ウッドベース、ギター2本にマンドリンやフィドル(バイオリン)を操るマルチプレイヤーの6人編成で、大迫力のアイリッシュ・ミュージックを基盤にしたサウンドを聴かせる。
一方でボーカル&ギターのTOSHI-LOWはハードコア・バンドBRAHMANのメンバーでもあるので、演奏やパフォーマンスにはロックバンドのニュアンスが色濃くにじみ出る。
「この前、長野のお寺でライブをやったとき、ご本尊の前でダイブをしてしまい、お坊さんに叱られました。今日はスローライブなので、大人しくやります」というMCに、会場は爆笑。この不思議なバランスで、会場をぐいぐい引っ張っていくステージは圧巻。sleepy.acとともに、イベントにフレッシュな風を吹き込んでくれたのだった。
大橋トリオがトレードマークのハットをかぶって現われただけで、ステージにはいいムードが漂う。お洒落でアーシーな彼の音楽は今、素晴らしい勢いでシーンの人気を集めている。ウッドベース、ドラム、ペダルスチールギターを従えて、大橋はギターやピアノを弾きながら歌う。普通のJ-POPのフォーマットから完全に一線を画したコードのセンスは、唯一無二。独自の道を歩く大橋だが、この日はそうしたスタイルに対する自信に満ち溢れた好ライブになった。
特に歌詞が心の奥まで届く「A BIRD」や、インテリジェンスに満ちた「トリドリ」では、大きな拍手が起こっていた。
畠山美由紀は、大好きなジョニ・ミッチェルのカバー「Help me」からスタート。ロマンスカーのCMソングとしてスマッシュヒットした「ロマンスをもう一度」で会場をつかむ。
感動的だったのは、中盤の詩の朗読だった。気仙沼出身の畠山は、「我が美しき故郷よ」と題された詩で、震災で失われた十八成浜(くぐなりはま)などの美しい景色やそこに暮らす人々のことを、名手・笹子重治のギターをバックに読み上げる。今年のSlow Music Slow LIVEのテーマのひとつである復興への祈りを、まさに体現してくれたシーンだった。
そして素晴らしかったのは、「花の夜舟」。昭和歌謡を彷彿とさせるおおらかなメロディが、畠山ならではの鎮魂の歌として響き、境内に染み渡っていった。
スペシャル・アクトは、超ベテランの長谷川きよし。60年代から独自のスタイルで音楽活動を続けてきた巨人だ。
まずは長谷川のスタイルの原点であるブラジル音楽の粋、「カルナヴァルの朝(黒いオルフェ)」。映画音楽として有名な曲を、完全に自分のレパートリーとして消化している。続いて、デビュー・ヒットとなった「別れのサンバ」。この2曲で、会場は長谷川の声とギターワークの虜となった。コンビを組むパーカッション仙道さおりのプレイもいい。
その仙道を送り出して、「元々、アイルランドで生まれた曲が、アメリカに伝わって、世界に知られるようになった曲です」と紹介してソロで歌ったスタンダード・ナンバー「ダニー・ボーイ」では、まったく衰えを感じさせない声に、会場から賞賛の拍手が起こる。ニューアルバムの準備をしているという長谷川の音楽は、時代に鍛えられた強さがある。一度は触れてみてほしい。
さて2011年のSlow Music Slow LIVE の大トリは、Char。ジャンベ古田たかし、スタンディング・ベースTOKIEというアコースティック・トリオ編成の、満を持しての初披露となった。
オープニングはなんとレッド・ツェッペリンの「Your Time Is Gonna Come」。3人はサザンロックのニュアンスで演奏する。また3人がコーラスする。それぞれ超絶のテクニシャンでありながら、中心であるCharの音楽に対する愛情とユーモアにシンクロするミュージシャンシップに溢れたアンサンブルを展開すると、それが会場に伝わって良いバイブレーションが起こる。客席の周囲では、この日出演したミュージシャンたちも熱心に見入っている。
最初から飛ばしていたCharトリオだが、ギアがさらにアップしたのは「Get High」だった。3人のグルーヴが、オーディエンスのハンドクラップ を得て、大きなウェイヴになる。アコースティックでも大音量のバンド以上にエキサイティングなグルーヴが生まれることを肌で感じたオーディエンスの表情が、どんどん変わっていく。本門寺の近くを地元とするCharが♪地元でよかった ありがとう 日蓮大上人♪とブルースの乗せてアドリブで歌うと、観客は大喜び。切れのよいリズムで最後の「Smoky」まで突っ走った。
さらにアンコールでは「今日のお客さんのために、さっき考えたアレンジで」と、クラプトンの大ヒット「Wonderful Tonight」をレゲエ・タッチで演奏。ハートウォーミングで、しかもスリリングなCharの醍醐味を満喫してイベントは幕を閉じたのだった。





































































